正式に登録が決定いたしましたね。いやあ、めでたい、めでたい。あらためて2013年を振り返ってみれば、もっとも印象深かった仕事のひとつが、歴代総理も密かに通うミシュラン星付き和食店のご主人から「和食の心得」なるものを伺った取材だった。その真髄をひとことでいえば……今年の流行語大賞にも選ばれた「お・も・て・な・し」である。
たとえば、今や世界各国で見かけるオープンキッチンのスタイルは、和食のカウンターから端を発したのだとか。料理を口にしていない時間も、客人を楽しませたいという思いが込められている。さらに目からウロコだったのは、お造りの盛りつけは3種類、5種類など実は奇数が基本だということ。「別れ」に通じる偶数を避けて、ご祝儀を包むのと同じ感覚なのだ。季節の恵みをおいしくいただき、大地に感謝するのは日本に限らず世界共通だが、「走り」と「名残」という前後を設けるのは和食だけ。客人のために心をつくし、入手が難しい食材を揃えましたという、これまたおもてなしの表れなのだそうだ。
そう聞いて思わず赤面したのは、2年前の秋の記憶が甦ったから。かの白州次郎&正子ご夫妻も贔屓にされていた某先生のお宅に伺い、夕餉に出されたのが、ハモとマツタケの鍋。今から思えば、名残と走りを組み合わせたすばらしいおもてなしだったのだが、「いぇ~い、ご馳走バンザ~イ!」と単純に歓び、食欲全開の中高生男子のようにわしわし喰らい。さらにはのんだくれでもある先生と意気投合して日本酒1升、ウイスキー1本を空にした後、お座敷にて高いびきで熟睡した、ダメダメなわたくし。ああ、この場に穴を掘って引きこもりたいほど恥ずかしい。もう既にいい年齢なのだから、少しは進歩したく、感謝の心も持ち合わせたく。
などという反省にひたる間もなく原稿に追われ、具のないうどんをすすりつつ、「なす1本でも、おいしければそれはご馳走」という和食店のご主人の言葉をいいように解釈し、自分を慰めている切ない年の瀬である。おそらく2014年もふつつか者のままですが、なにとぞお見限りなく、よろしくお願いいたしますね。

ひとつひとつの美しい所作に見入った、青森市「寿司一」さんのカウンタ-。
写真:松隈直樹

今年No.1のほやをいただいた鰺ヶ沢の宿。1泊2食で6000円足らず!
写真:松隈直樹