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連載企画

縄文遊々学-岡田 康博-

第15回 「縄文遺跡とETC割引効果」 2009年6月18日

今年のGW期間中、三内丸山遺跡には例年にも増して大勢の見学者が訪れていました。駐車場を見ても、県外ナンバーの車が多く、ETC割引効果が確実に現れたものと思います。普段あまり見かけない、関西や中四国、九州といった遠方からの車もありました。この際、三内丸山に行ってみよう、と思われた方も多かったことでしょう。さすが、知名度抜群の全国区の遺跡の面目躍如といったところでしょうか。

平成7年度から本格的に遺跡を公開して以来、これまでに約530万人を越える方々が訪れています。今年の夏には延べ550万人を越すことがほぼ確実となっています。ちなみに年間最多は平成9年度の約57万人です。最も少ない年は平成7年度の約27万人です。昨年度も約31万人の見学者がありました。これだけの見学者が訪れる遺跡はそれこそ九州の吉野ヶ里遺跡と三内丸山遺跡しかないと言っていいでしょう。ともに日本を代表する遺跡になっているわけです。

さて、その西の横綱吉野ヶ里遺跡とて、いつも満員御礼というわけにはいきません。上半期に関しては我が三内丸山遺跡の方が見学者が多いわけです。しかし、冬を迎える11月以降はやはり温暖な九州には太刀打ちできません。降雪地帯という地理的条件を考えると年間30万人以上の入場者というのは驚きの、予想外の数字と言えるでしょう。結果的に数字の上では、三内丸山遺跡は県内有数の観光地となっているのです。

それではなぜ多くの見学者が訪れるのでしょうか。その要因はいろいろと考えられます。

まずは、知名度が抜群に高いということでしょう。社会科や国語の教科書にも登場しますし、多くの歴史関係の本でも取り扱われています。それから遺跡公園として公開され、見学に必要な整備が行われていることも重要です。実物遺構や復元建物、展示室、ショップ、レストラン、トイレ、駐車場・・・など基本的なものは揃っています。わざわざ足を運んで頂くためにはそれなりの準備、用意が必要となります。そして、遺跡の最新情報や交通情報などが掲載されたホームページも充実していることも大きいと思います。青森市街地に近く、高速道路のインターもすぐそばにあり、交通アクセスにも恵まれています。そういう意味では訪れやすい立地条件に恵まれています。そして何よりも遺跡そのものが魅力的でなければならないのは当然のことです。

日本人は歴史好きと言われています。日本列島では人種の交代といった大事件はなかったとされていますから、いにしえの縄文人が我々の直接の先祖であったと考えられています。歴史をたどる、文化遺産や遺跡を訪ねることは直接我々の先祖の営みに触れることであり、大きな違和感を覚えることなく、自然にそのものを受け入れられることができ、それは心が落ち着く、何とも心地よい時間なのだと思います。

年度別見学者数、グラフ入り

プロフィール

岡田 康博

1957年弘前市生まれ
青森県教育庁文化財保護課長  
少年時代から、考古学者の叔父や歴史を教えていた教員の父親の影響を強く受け、考古学ファンとなる。

1981年弘前大学卒業後、青森県教育庁埋蔵文化財調査センターに入る。県内の遺跡調査の後、1992年から三内丸山遺跡の発掘調査責任者となり、 1995年1月新設された県教育庁文化課(現文化財保護課)三内丸山遺跡対策室に異動、特別史跡三内丸山遺跡の調査、研究、整備、活用を手がける。

2002年4月より、文化庁記念物課文化財調査官となり、2006年4月、県教育庁文化財保護課三内丸山遺跡対策室長(現三内丸山遺跡保存活用推進室)として県に復帰、2009年4月より現職。

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