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あそこのおかあさん縄文人だから -山田スイッチ-

第78回 ドラえもんと遮光器土偶 2015年3月16日
参考 『あなたの知らない青森県の歴史』山本博文 監修(洋泉社)  『大長編ドラえもん VOL.9 のび太の日本誕生』藤子・F・不二雄(小学館)

参考 『あなたの知らない青森県の歴史』山本博文 監修(洋泉社)
 『大長編ドラえもん VOL.9 のび太の日本誕生』藤子・F・不二雄(小学館)

藤子・F・不二雄先生の描く
『大長編ドラえもん VOL.9 のび太の日本誕生』(小学館)に、
遮光器土偶をモチーフにしたキャラクターが出てくるのを
皆さん、ご存知ですか?

「学校でも家でも叱られてばっかり! ぼくは家出する!」
そんなことを突然言い出すのび太を
たしなめていたドラえもんですが、のび太のお父さんが
ネズミにそっくりなハムスターの世話を部長に頼まれて家に持ってくると、
ドラえもんまでもが家出をする決意を固めてしまいました。

のび太と仲間たちはタイムマシンに乗って
日本にまだ人間が住み始める前の時代……7万年前に行くことに決めます。
7万年前の日本には絶滅危惧種のトキの群れが
たくさん空を渡っていきます。

その頃、原始時代から現代の日本に、
時空の乱れからやって来てしまった原始人のククルは
のび太の家の屋根の上で「うお~うお~」と吠えていました。

(このように、藤子不二雄作品を読んで育った我々日本人は、
空間移動であるとか、タイムワープというSFの概念を小さいころから
「タイムマシン」や「どこでもドア」によって
学んでいるので、他国の子どもたちよりも理解するのが
早いのではないか? と言われています。)

話を聞いてみると、ククルは旧石器時代のヒカリ族の子どもで、
村はクラヤミ族に襲われてしまったといいます。
クラヤミ族はヒカリ族を捕らえて、奴隷のように働かせているのです。
そして、クラヤミ族には恐ろしい「精霊王ギガゾンビ」が付いていると……。

ここでドラえもんの鋭い洞察が顕れます。

「ハハア……それはまじない師みたいなものだね。」
「マジナイシ?」
「大昔の人はこの世界のあらゆるものに精霊が宿っていると考えた。
木にも岩にも鳥やけものにも。そして、もし精霊たちをおこらせると、
おそろしい災いがくると信じていたんだ。
地震、山火事、大洪水、伝染病……。
そんな時、おまじないをして精霊をなだめる力をもった人が
原始社会ではうやまわれ、おそれられていたんだ。」

おおっと、ドラえもんがシャーマンの存在について語り出しました!

この後、ただのまじない師だと思われていた精霊王ギガゾンビの
下僕である「ツチダマ」が表れるのですが、このツチダマこそが
藤子先生が遮光器土偶をモチーフに描いたキャラクターです。
土の塊なのに目が光ると衝撃波を出し、空を自由に飛び回り、言葉を喋るという……
大人をも戦慄させるキャラクターなのです。

何が恐いかというと、衝撃波をドラえもんのヒラリマントではね返された
ツチダマは、ドラえもん達がいなくなるとバラバラになった体をぴくぴくと
動かし、カチャカチャとひとりでに破片を接合して元の体に戻ると、
ヒュンと飛んで、ギガゾンビの元へ報告に戻るのです。

この辺り、藤子先生がこの作品をコミックスで発表した1989年よりも
前に、(三内丸山遺跡が発掘される1994年よりも5年も早く)
考古学に興味を持たれていて、土偶が一度破壊され、接合されて
いたかもしれないということを、知っておられたことをあらわしています。
藤子先生は遮光器土偶を一体、何で知ったのでしょうか?

しかもその土偶の不思議さや謎を、
この上なく上手にマンガに活かしているのです。

物語はギガゾンビとドラえもん達の対決へと進んで行きますが、
この続きは『大長編ドラえもん VOL.9 のび太の日本誕生』を
買って読んで下さいね☆

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プロフィール

山田スイッチ

1976年7月31日生まれ。

しし座のB型。青森県在住コラムニスト。 さまざまな職を経て、コラムニストに。 著書に「しあわせスイッチ」「ブラジルスイッチ」(ぴあ出版刊)、「しあわせ道場」(光文社刊)がある。

趣味は「床を雑巾で拭いて汚れを人に見せて、誉めてもらうこと」。

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