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連載企画

世界の"世界遺産"から

第21回 この星最大の”世界遺産”に涙。 2010年12月20日

あまり芳しくないニュースが多かった今年、JAXAの「はやぶさ」のはなんとも嬉しい出来事のひとつ。弘前出身の川口淳一郎教授の「夢の上をいくような信じられない気持ち」という名言と笑顔は、個人的にもっとも心ふるえた場面である。

その「はやぶさ」が地球に戻ってきた直後、わたくしはスペースシャトルの発射台があるフロリダ、管制室があるヒューストンと、アメリカでNASAをハシゴしていた。NASAの施設は実は、一般の観光客にも一部が開放されている。そこで宇宙飛行士の訓練を体験するべし、とのミッションが下ったのである。

幼い頃、青森市民センターのプラネタリウムに毎月通い、宇宙飛行士になるのが夢だった身としては、ふたつ返事での了解、ラジャー! とはいえ、フロリダでの訓練体験ではまず、シャトル着陸の操縦シミュレーションで失敗を重ね、数千億ドルもの損失を計上。

さらにはG体験ができるマシンでは、数秒後に首がもげそうな恐怖にかられて「Stooooooooop!」と絶叫。夢はそれ以上のなにものでもないままに終わったのだが。ヒューストンでは、国際宇宙ステーションとコンタクトを取る管制室を見学。目の前の大きなスクリーンには、ステーションのカメラが捉えた地球が映し出されていた。

テレビや写真で見慣れた姿ながら、リアルタイムな状況、すなわち今、自分が目の前の地球の上に立つ不思議に感無量。この星すべてが、皆で守るべき世界遺産なのだよなあ。そう思いながら、美しい青が目にしみた。涙ぐみつつ、「ドラえもん」愛好家として頭に浮かんだのは、「どこでもドア」。

もし、5000年光年離れた遙か遠い星に瞬間移動して、そこから超高性能特大望遠鏡の焦点を青森に合わせたら、5000年前の三内丸山遺跡での暮らしぶりが見えるはずではないか。生き生きとした人々の笑顔を、こっそりのぞけるのではないか。

ああ、やっぱり宇宙に行きたい。おおっ、そういえばもうひとつ、忘れちゃならない「はやぶさ」が……新幹線開通! おめでとうございます。これぞ、青森の長年の夢。腰痛持ちののんだくれとしては、グランクラスも気になるところ。

宇宙云々以前に、こちらに挑戦しなくては……。なにはともあれ、青森にとって、縄文の遺跡群にとって、2011年がより良き年になりますよう、心から。

プロフィール

山内 史子

紀行作家。1966年生まれ、青森市出身。

日本大学芸術学部を卒業。

英国ペンギン・ブックス社でピーターラビット、くまのプーさんほかプロモーションを担当した後、フリーランスに。

旅、酒、食、漫画、着物などの分野で活動しつつ、美味、美酒を求めて国内外を歩く。これまでに40か国へと旅し、日本を含めて28カ国約80件の世界遺産を訪問。著書に「英国貴族の館に泊まる」「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(ともに小学館)、「ハリー・ポッターへの旅」「赤毛のアンの島へ」(ともに白泉社)、「ニッポン『酒』の旅」(洋泉社)など。

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