「考古学者は、(土器を探して)下を見る
植物学者は、(樹木をあおいで)上を見る。
わたしは、中間の植物に注目したい。」
そう語ったのは、佐々木由香さん。
先日の東京縄文塾でのこと。
佐々木さんは、パレオ・ラボという科学分析会社に所属し、全国の遺跡を回っています。それだけに、最新のホットな現場の情報のお話をうかがえました。
佐々木さんが、注目した植物というのは、シダ植物、中でも、ワラビだそうです。
このワラビのお話が、とても興味深いものでした。
ワラビは、大きくなると、1メートル近くなります。
縄文人は、ワラビの繊維を利用して、ワラビの縄をつくっていたふしがあります。
ふつうワラビは、食用と考えますが、縄文人は、そんなステレオタイプな考えには、納まらないようです。
桜田遺跡というところからは、ワラビの繊維で出来たカゴが、出土しているといいます。
カゴというと、わたしたちは、竹のカゴを思い出しますが、日本列島にモウソウチクが入ってきたのは、時代がずいぶん下って、中世のころだそうです。
竹に代わって、木のツルやいろいろなものが、活用されたと思います。
そのなかで、ワラビの繊維が、がぜん注目されるようになったといいます。
これは、ごく最近のことだそうです。
冒頭に、紹介したように、これまで、あまりシダ植物に、関心が向けられなかったせいです。でもこれから、全国の遺跡の発掘の中で、シダ植物とりわけワラビのはたした役割が再発見されるかもしれません。これも、女性の観察者ならではの地道な研究の成果だと思います。