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連載企画

世界の"世界遺産"から

第77回 007が案内するスリリングなイギリス世界遺産 2016年1月22日

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、はたまたお子さんと一緒に「妖怪ウォッチ」。この年末年始、映画館に足を運ばれた方は多いのではないだろうか。かくいうわたくしが観たのは、「007 スペクター」。締切地獄が続くなか無理矢理だったが、大好きなレイフ・ファインズと前作に引き続き会えるのだからしょうがない。しかも、このコラムにも関係あり。007シリーズは世界遺産が多数登場し、そのすばらしい姿を堪能……否、ジェームズ・ボンドや悪役の皆さまの暴れっぷりを前に、ハラハラしてしまうのだ。
「007 スペクター」では冒頭から、メキシコシティ中央広場ではっちゃけてくれた。第16回でご紹介した、世界遺産である。しかも、お祭りの最中に街中や上空で、あんなことやこんなことを……(内容の詳細はご覧になってのお楽しみ)。青森でたとえるなら、「弘前さくらまつり」で桜満開の日に、お城の上で空中戦が繰り広げられるような感じか。

さらには、ロンドンである。MI6本部がテムズ川沿いに建つ設定のため、前作同様、周辺の景色がふんだんに登場する。「ビッグ・ベン」として知られる時計塔があるウェストミンスター宮殿、タワー・ブリッジの先のロンドン塔と、界隈は世界遺産が立ち並ぶエリア。なのに、ジェームズ・ボンドってば……。手に汗握りつつ、ロンドンの夜景を満喫した次第である。

もうひとつ、とある組織の秘密会議が開催された場所として、オックスフォード近郊の「ブレナム宮殿」が撮影に使われた。初代マールバラ公爵ジョン・チャーチルが18世紀初頭に着工した、これまた世界遺産。名字にピンと来た方もいるだろう。そう、イギリスの首相ウィンストン・チャーチルの生家なのだ(「家」という言葉がまったく似合わない壮麗さ)。アストンマーチンをはじめ、ジャガー、ロールス・ロイスなど高級外車が並ぶ様子ともに外観が映るだけだが、実は絵画をはじめ内部の美術品もすばらしく、イギリス旅行の際にはぜひ足を伸ばしていただきたい。

ほか、「クリスマス・キャロル」の作者チャールズ・ディケンズも常連だった、ロンドン最古の老舗レストラン「ルールズ」も撮影の舞台となり、見終わった後から、彼の地への思いが募るばかりの今日この頃である。007としばらく縁がなかった方は、まずは前作「スカイフォール」から見始めた方が絶対に楽しめる。蛇足ながらその「スカイフォール」には、昨年世界遺産に登録された長崎県軍艦島の景色がセットに反映されているので、そちらもご注目を!

「007 スペクター」で危機的状況にさらされるウェストミンスター宮殿 写真:松隈直樹

「007 スペクター」で危機的状況にさらされるウェストミンスター宮殿
写真:松隈直樹

今もマールバラ家がクリスマスに集うという、ブレナム宮殿大広間 写真:松隈直樹

今もマールバラ家がクリスマスに集うという、ブレナム宮殿大広間
写真:松隈直樹

 

プロフィール

山内 史子

紀行作家。1966年生まれ、青森市出身。

日本大学芸術学部を卒業。

英国ペンギン・ブックス社でピーターラビット、くまのプーさんほかプロモーションを担当した後、フリーランスに。

旅、酒、食、漫画、着物などの分野で活動しつつ、美味、美酒を求めて国内外を歩く。これまでに40か国へと旅し、日本を含めて28カ国約80件の世界遺産を訪問。著書に「英国貴族の館に泊まる」「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(ともに小学館)、「ハリー・ポッターへの旅」「赤毛のアンの島へ」(ともに白泉社)、「ニッポン『酒』の旅」(洋泉社)など。

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