現在、上野の国立東京博物館で開催されている「土偶展」は、
実は、大英博物館で開催されたものの里帰り展です。
いま、手元に2冊のカタログがあります。
白い表紙は、東博の日本展向けのもの。赤い表紙は、「THE POWER OF DOGU」と
題した大英博物館での展覧会のものです。
この2つのカタログを見ると、土偶への迫り方がずいぶん違っていることがわかります。
大英博物館のものは、単に、土偶の紹介にとどまらず、日本のコミックに登場する土偶から、岡本太郎のアートにみられる土隅的なるものまで、ひろく現代の日本人が、土偶を
どう受け止めているかを分析しています。
このカタログにかかわった英セインズベリー日本藝術研究所のニコルさんにお会いしたとき、彼女は、こんなことを言っていました。
「現代日本人は、土偶を守護神・お守りとして受け止めている。」
この捉え方の背景には、「ふるいもの、たとえば、伝統とどう向き合うか」という欧米人の
基本的な姿勢がかいま見えます。
つまり、「ふるいとか、伝統的だということは、それだけでは価値がない。現代人にとって
どんな意味があるか明らかにしない限り。」ということらしいのです。
これは、これから、縄文遺跡を世界遺産にしようと働きかけるとき、おおきなヒントになる部分だと思います。
やはり、土隅は、奥が深いですね。
ところで、ヨーロッパにおける土隅を考える意味で、興味深いシンポジウムが
2月24日(水)夜6時から、東京・築地の朝日新聞社読者ホールで開かれます。
英セインズベリー日本藝術研究所のサイモンさんが、「ヨーロッパの土隅」というお話を
される予定です。関心のある方は、ぜひおいでください。
シンポジウム問い合わせ先
NPO法人三内丸山縄文発信の会 017-773-3477
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