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連載企画

縄文のワケ -菊池 正浩-

第20回 土偶のワケ(3)里帰り展 2010年2月17日

現在、上野の国立東京博物館で開催されている「土偶展」は、

実は、大英博物館で開催されたものの里帰り展です。

いま、手元に2冊のカタログがあります。

白い表紙は、東博の日本展向けのもの。赤い表紙は、「THE POWER OF DOGU」と

題した大英博物館での展覧会のものです。

この2つのカタログを見ると、土偶への迫り方がずいぶん違っていることがわかります。

大英博物館のものは、単に、土偶の紹介にとどまらず、日本のコミックに登場する土偶から、岡本太郎のアートにみられる土隅的なるものまで、ひろく現代の日本人が、土偶を

どう受け止めているかを分析しています。

このカタログにかかわった英セインズベリー日本藝術研究所のニコルさんにお会いしたとき、彼女は、こんなことを言っていました。

「現代日本人は、土偶を守護神・お守りとして受け止めている。」

この捉え方の背景には、「ふるいもの、たとえば、伝統とどう向き合うか」という欧米人の

基本的な姿勢がかいま見えます。

つまり、「ふるいとか、伝統的だということは、それだけでは価値がない。現代人にとって

どんな意味があるか明らかにしない限り。」ということらしいのです。

これは、これから、縄文遺跡を世界遺産にしようと働きかけるとき、おおきなヒントになる部分だと思います。

やはり、土隅は、奥が深いですね。

ところで、ヨーロッパにおける土隅を考える意味で、興味深いシンポジウムが

2月24日(水)夜6時から、東京・築地の朝日新聞社読者ホールで開かれます。

英セインズベリー日本藝術研究所のサイモンさんが、「ヨーロッパの土隅」というお話を

される予定です。関心のある方は、ぜひおいでください。

シンポジウム問い合わせ先

NPO法人三内丸山縄文発信の会 017-773-3477


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プロフィール

菊池 正浩

番組プロデューサー。

NPO法人・三内丸山縄文発信の会会員。 1946年生まれ。青森県弘前市出身。早稲田大学卒業。NHK入局後、美術・歴史番組を担当。 1994年NHK青森放送局で大集落発見直後の三内丸山遺跡を紹介。

その後、東京で NHKスペシャル「街道をゆく」「四大文明」 「日本人はるかな旅」「文明の道」などを担当。

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