大英博物館8万人。
東京国立博物館12万人。
これは、それぞれで開催された「土偶展」の入場者数です。
今やちょっとした土隅ブームです。
この土隅ブームの仕掛け人のひとりともいうべき方にお話を聞く機会がありました。
2月24日、東京で開催されたNPO法人・三内丸山縄文発信の会の「東京縄文塾」でのことです。
イギリスのセインズベリー日本藝術研究所の副所長サイモン・ケイナーさんです。
サイモンさんは、土偶のレプリカを手に取りながら、土偶の魅力について話されました。
手の中にすっぽり入る小さな土隅、少し大きめの土隅、それぞれ意味が違うようです。
小さなものは、個人が身につけて、お守りにしていたかもしれないし、少し大きめの
ものは、家族や共同体の儀式に使われたのかもしれないといいます。
この人間を感じさせる「小さな世界」が、なんといっても人々を引き付けるといいます。
じつは、サイモンさんが手にした土隅は、ヨーロッパのバルカン半島から出土したものでした。(写真参照)
さらに、サイモンさんは、土偶に「共生」というテーマを込めようとしています。
セインズベリー日本藝術研究所は、今年の夏(6月22日~8月29日)、同研究所で、
ヨーロッパのバルカン半島の土隅と日本列島の土偶の比較展を企画しています。(写真参照)
コソボなどかつての紛争地には、とても魅力的な土偶が出土していました。それが、戦争の混乱で、散逸したり忘れられようとしています。
この土偶をバルカン半島のひとびとの文化のアイデンテェティとして、再評価しようという機運が盛り上がってきました。
大英博物館での日本からの土隅展も大きな刺激になりました。日本で、土偶を3点も、
国宝に指定しているのは、ヨーロッパの人々には、驚きでした。
しかも、その個性的な表情の一方で、バルカン半島の土偶に通じる人間の表現―。
大英博物館に、8万の人が訪れ、さらに、ヨーロッパの考古学者にも注目されました。
日本の土隅が、ヨーロッパの人々に、土偶の価値を認めさせ、ひいては、バルカン半島の土偶の再評価のおおきな引き金になろうとしています。
恐るべし土偶パワー!
この土偶の持っている力をわたしたちは、充分捉えていませんでした。
サイモンさんの話を聞いて目からウロコの思いがしました。
東京国立博物館では、会期が後半になると、これまでの年配の考古学ファンにかわり、若い女性たちの姿が多かったといいます。
この土偶パワーは、縄文を世界遺産にという運動にとってもおおきなヒントがあるような気がします。
土偶こそ、世界に縄文をアピールする強力な文化大使ではないでしょうか?
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